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【スワップ金利】海外FXでもアービトラージトレード(裁定取引)はできるの?

投資の世界には「必勝法」ともいわれている戦略が存在します。その投資戦略がアービトラージ(裁定取引)。アービトラージとは、「同価値の商品における価格差を利用して利ザヤを稼ぐ取引」のことです。

身近な例でいうと、日本では希少価値がなく安く手に入る水を砂漠など水の希少価値が高い地域で販売するのもれっきとしたアービトラージの一種。(実際は輸送費などがかさんであまり利益にはなりませんが)地域毎の商品の希少性の差によって生じる価格差を利用することで確実に利益を上げることが可能です。

FXの世界では、日をまたいでポジションを持ち越すことによって付与されるスワップ金利の価格差を利用したアービトラージが存在します。

このアービトラージを用いることで、リスク0で確実に利益を積み重ねることが理論上可能です。しかし、アービトラージは実際の取引に応用するのは困難で、仮に応用したとしても最悪の場合口座が解消されてしまう恐れさえあります。

ここではスワップ金利を利用したアービトラージの方法や、なぜ海外FXではアービトラージが困難なのかについてお伝えしていきます。

スワップ金利を利用したアービトラージの手法

まず海外FXのスワップ金利とは何か?それをどのように利用することで理論上アービトラージが可能になるかについて解説します。

日をまたいだポジション保持に発生するスワップ金利

海外FXにおけるアービトラージを理解するためにはまずスワップ金利について理解が必要です。

短期売買が主流の海外FXでは見落とされがちですが、日をまたいでポジションを持ち越すこと(ロールオーバー)によって口座残高が微増したり、微減したりする場合があります。そのポジションの増減の原因になっているのがスワップ金利。スワップ金利は国ごとに設定されている金利が異なることによって生じます。

以下がアジアやヨーロッパの主要国の金利一覧です。

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(引用元:FXSTREET「世界金利表」

経済状況や金利政策の違いから、上記のように各国の金利にはばらつきがあり、この金利差はFX取引にも影響を与えます。

例えば豪ドル円(AUD/JPN)の通貨ペアで1lotのポジションを持つ場合、オーストラリアの金利は年利2%で日本の金利は0.1%なので、差し引き1.9%の金利差によって

ロングポジション(円売豪ドル買)→年利1.9%のプラススワップ(所持ポジションに対して、年利1.9%の利益)

ショートポジション(豪ドル売円買)→年利1.9%のマイナススワップ(所持ポジションに対して、年利1.9%の損失)

のスワップ金利が生じます。

スワップ金利は1日のロールオーバー毎に発生するので、年利1.9%の日割り計算で約0.0052%、つまり1lot(10万通貨)あたりの1日単位のスワップ金利は約520円になります。この場合、日をまたいでポジションを持ち越した時の損益はロングポジションで+520円、ショートポジションで-520円です。

つまり、金利が高い国の通貨を買うようなポジションを持つことによってポジションを決済しなくても利益を得ることができます。逆に金利が低い国の通貨を買うようなポジションを持つ場合は、スワップ金利の分だけ損することになります。

例えば日本は超金利政策なので、円がらみのほとんど通貨ペアにおいてロングポジションでプラススワップ、ショートポジションでマイナススワップです。

国内FXではこのスワップ金利を意識しているトレーダーが多いようですが、ノーマルな海外FX取引においてスワップ金利の重要性は極めて低いといえるでしょう。ハイレバレッジが特徴の海外FXでは、レバレッジが高い分国内FXよりも値動きが証拠金維持率に与える影響が大きいですからね。

どうしても為替変動による損益の方が大きくなるので、スワップ金利を気にしてもあまり意味がありませんし、そもそもポジションをロールオーバーして放っておくことで強制ロスカットの危険性が高まってしまいます。

しかし、スワップ金利も使いようによってはリスク0で確実に利益を上げていくための「種」になります。

業者毎のスワップ金利差を利用した両建てアービトラージ

冒頭でも述べたように、スワップ金利を用いると理論上リスク0で儲けだけを重ねていくアービトラージが可能です。その為には以下の2点の条件を満たす必要があります。

  1. 為替変動に伴うリスクを0にする
  2. 総スワップ収支がプラスになるようにポジションをもつ

まず、スワップポイントだけで利益をあげ続けるためには為替変動におけるリスクを抑えなければなりません。そのためには両建て(ヘッジ)でポジションを持つことが必要になります。

両建てとは、1つの通貨ペアで同時に同じ大きさのロングとショート両方のポジションを保持する取引戦略のことです。反対ポジションを同じサイズもつことで、為替相場がどちらに振れても値動きによって損失を被ることはなくなります。

ただ、1つの業者内での両建てでは意味がありません。海外FX業者のスワップ金利は同じ業者内でもマイナススワップがプラススワップよりも大きく設定されているからです。

例えば、XMの主要通貨ペアのスワップポイント(スワップ金利をポジション1lotあたりの損益に業者が換算したもの)は以下のようになっています。

 通貨ペア スワップポイント
ロング  ショート
 EUR/RUB  -233.67  215.67
 EUR/ZAR  ‐290.75  259.31
USD/MXN -133,95 100.95

※スワップポイントの大きな通貨ペアを抜粋

それでは、両建てで為替リスクをヘッジしながら②の「総スワップ収支がプラスになるようにポジションをもつ」にはどうしたらいいのでしょうか。

もちろんプラススワップの方のポジションを大きくするのはNGです。そうすると今度は通貨価格変動によって損するリスクが復活してしまいますからね。

その解決策は異なる2つの業者で両建てポジションをもつことです。実は、海外FXのスワップポイントは業者によって異なります。

例えば上記のXMにおけるユーロ南アフリカランドの通貨ペアでは(EUR/ZAR)、ショートポジションで259.31のプラススワップが付与されていますね。ロングポジションのマイナススワップが259.31以下の海外FX業者を探してポジションを持つができれば、為替リスク0で総スワップ収支がプラスになるようにポジションを持てることになります。

仮にリスクヘッジ用にロングポジションのマイナススワップが180の海外FX業者を見つけることができたとすると、差し引き約80スワップポイント分の利益を確保しながら為替変動の影響をシャットダウンできる体制の完成です。

この場合80スワップポイントは80南アフリカランドのことなので、日本円に換算して1日1lotのポジションを持ち越す毎に約690円の利益を確実に重ねていくことが可能になります。気を付けるのは長期的にポジションを保持する上での証拠金維持率だけです。

フリースワップ口座(イスラム口座)を用いると利益増大

業者をまたいだ両建てで理論上は為替リスク0でコツコツ利益をあげていくことができることはわかりましたが、10万通貨のポジションで1日あたり700円弱ではもの足りないと感じている方も多いのではないでしょうか。

実はスワップ金利を利用したアービトラージで1日当たりの利益効率を高める方法が1つだけ存在します。それはリスクヘッジ用のポジションをフリースワップ口座で持つことです。

フリースワップ口座とは、その名の通りスワップ金利が全く発生しない口座のこと。プラススワップはもちろん、マイナススワップも発生しません。

そこで上述の例においてリスクヘッジ用のロングポジションの口座をフリースワップ口座に置き換えて考えてみましょう。

ショートポジション→259.31のプラススワップ

ロングポジション→マイナススワップ0

ショートポジションのプラススワップ259.31を丸々享受できるようになります。日本円で1日あたり約2,230円の利益で、先ほどの例と比べて利益は3倍以上に跳ね上がってますね。両建てアービトラージにフリースワップ口座を組み合わせることで利益効率は各段に改善されています。

ここまでを見るとすこぶる優秀に見える、アービトラージ。

しかし海外FXジャッジメント運営では、海外FXのアービトラージをオススメしていません。その理由は以下の通りです。

海外FXでアービトラージがオススメできない4つの理由

確かにスワップ金利に着目することで海外FXにおいてもアービトラージが理論上可能です。

しかし実際は「業者側の規制」や必要資金の面でアービトラージがやりづらくなっています

①業者をまたいだ両建ては業者が禁止している場合が多い

まずアービトラージの大前提である為替リスクを0にするための業者をまたいだ両建て取引は、海外FXでは禁止事項として規定されている場合が多いです。

正規の取引を斡旋したい海外FX業者側からしたら当然の措置といえるでしょう。もしアービトラージがばれた場合、口座の凍結や利益のはく奪措置が取られる可能性もあります。

②長期的なポジション保持は業者に悪印象

ポジションを決済せずに長期的にポジションを保持し続けている口座は、FXブローカー側から嫌がられます。海外FX業者の大きなキャッシュポイントはスプレッドなので、取引しないトレーダーははっきり言って邪魔ですからね。スプレッドを支払わない上、トレーダーの口座を維持するための手数料に加えて、1日毎にスワップポイントを支払わなければいけない業者側からしたらたまったもんじゃありません。

業者から警告されることもあるでしょうし、その警告にも従わなかった場合には口座が解消されてしまう恐れがあります。

③元々ムスリム専用のフリースワップ口座を日本人に提供している業者は怪しい

海外FXにおけるアービトラージの特効薬ともいえるのがフリースワップ口座ですが、フリースワップ口座はもともとイスラム教徒のための口座です。

イスラム教徒はイスラム教の法典シャリーアの中で金利を受け取ることを禁じられているため、彼らでもFX取引できるようにという業者の善意でフリースワップ口座は設けられています。

基本的にはイスラム教徒であるという証明がないとフリースワップ口座を開設することはできませんが、ごくまれに日本人向けにもフリースワップ口座を提供している海外FX業者も存在します。

しかし、そのような業者は怪しい臭いのする業者が多いのが特徴です。スプレッドやボーナス、日本語サポートや信頼性において他業者と競争力がないため他業者では提供しない口座を提供することで差別化を図って顧客獲得を狙っています。当然顧客の入金目的の詐欺業者である危険性も高まります。

残念ながら当サイトで紹介してる海外FX業者で日本人向けフリースワップ口座を提供している業者はありませんし、詐欺のリスクを犯してまでフリースワップ口座を求めることもあまりオススメできません。

④まとまった資金が必要

アービトラージトレードは証拠金維持率に余裕をもって2つの業者で両建てでポジションをもつ必要があります。一般にスワップ金利が高い通貨ペアはマイナー通貨ペアなため、1日あたりの値動きが大きいのが特徴です。ロスカットを避けるために両建てする2業者共にかなりの口座資金が必要になってきます。

例えば、両建てアービトラージで1日約700円、1か月約2,1000円の利益を得るためにはどれほどの資金が必要となってくるのでしょうか。具体的に概算してみましょう。

EUR/ZARで1日約700円、1か月約21,000円の利益を出すために必要な資金概算

  • プラススワップ用の口座は既出のXMのEUR/ZARショートポジション259.31/lotのプラススワップ
  • マイナススワップのヘッジ用口座はEUR/ZARロングポジションで180/lotのマイナススワップ
  • 1南アフリカランドは約8.6円(現行レート)

以上の設定で両建てアービトラージを行うと仮定します。この場合差し引き約80スワップポイント分、日本円に換算して1日約700円の利益が生じることになります。(1か月約2,0000円)

まず、両方の口座で1lot10万通貨のポジションを保持する必要があります。ここで注意すべきなのは強制ロスカット。片方の口座どちらかがロスカットしてしまったら両建ては成立しなくなるので、両方の口座でポジションを維持し続けなければなりません。

そのため、あらかじめ証拠金維持率に余裕をもってポジションを持たなくてはなりません。それでは10万通貨のポジションを持つ際に、どのくらいの資金を準備すればいいのでしょうか。それを考えるためにはEUR/ZARの1日当たりの値動きを加味する必要があります。

そこで、EUR/ZARの為替チャートを見てみましょう。

EURZAR (1)

1週間の中で、値動きが大きい時には1日あたり約35pipsも値動きがありますね。EUR/ZARで証拠金維持率に余裕をもってポジションをもつためには最低でも35pipsの逆行pipsに耐えなければなりません。

35pipsは10万通貨のポジションの場合、35,000南アフリカランド円で日本円に換算すると約30万円です。各口座に最低30万円づつなので、最低60万円以上の資金を用意する必要があります

このように、せいぜい月2万程度のリスクを上げるためには、その利益の30倍以上の資金を準備しなければなりません。

海外FXでもアービトラージ可能!されど茨の道

スワップ金利の価格差を利用した業者間両建てなら海外FXでもアービトラージは理論上可能です。為替リスクを無にして1日毎にスワップポイント分の収入が見込めるため、理論上は100%儲けることができます。

でもそんなトレーダーにとっておいしい話、業者側がみすみす許してくれるわけありませんよね。ブローカー側も当然取引規制等で「必勝法」を禁じてくるはずです。場合によっては口座解消等でアービトラージの見込み利益よりも大きな損害を被ってしまう場合も大いに考えられます。

また上述の通り、アービトラージは多額の資金準備が必要です。多額の資金を投入した口座に対して口座解消のリスクを背負うのは賞賛しがたい行為ともいえるでしょう。

当サイトとしては、あくまでしっかりリスクを背負った上で健全に取引することをオススメします。


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